コタローです。
注文住宅の会社が、ひとつ倒れました。
木造の注文住宅を手がけていたアエラホームという中堅メーカーが、7月16日に東京地裁へ民事再生法の適用を申請したそうです。負債は約61億円。ニュースを読んで、僕はしばらく画面から目を離せませんでした。
報道でまず強調されていたのは「施主は守られる」という話でした。
スポンサーになる会社が新築の請負契約を引き継いで、家を建てている途中のお客さんにはちゃんと完成まで責任を持つ。契約が途中で消えることはない。そう発表されています。家を建てている人からすれば、これは本当にありがたい話だと思います。
でも僕が引っかかったのは、そこじゃないんです。
債権者の数を見てください。金融機関は4社。それに対して、取引業者はおよそ560社もあるんです。
この560社って、いったい誰なんでしょうか。
木材を納めていた材木屋さん。基礎を打つ職人さん。屋根を葺く業者さん。電気を配線する電気屋さん。壁を塗る左官屋さん。そういう、家を一軒建てるために現場で汗をかいていた、たくさんの下請けや取引先です。
僕は、その側にいた人間なんです。
むかし僕は、建築の下請けで個人事業をやっていました。元請けから仕事をもらって、現場に入って、材料を仕入れて、職人さんに払って、それでようやく手元にいくらか残る。そういう商売です。
下請けって、立場が本当に弱いんですよ。
単価は上げてもらえない。でも材料費や人件費は先に出ていく。工事が終わって、請求書を出して、お金が振り込まれるのはずっと先。その「振り込まれるはず」のお金をあてにして、次の現場の仕入れを回していくわけです。
だから、元請けが倒れると、どうなるか。
「振り込まれるはず」だったお金が、消えるんです。
もう払った材料費は返ってこない。職人さんへの支払いは待ってくれない。手元の現金だけが、すっと抜けていく。僕はこの感覚を、身をもって知っています。
僕が4000万円の借金を背負うことになった入り口も、まさにここでした。
最初は、事業のための銀行融資でした。保証協会をつけて、まっとうに借りて、まっとうに返していた。ここまでは何の問題もなかったんです。
でも下請けの構造の中で、入ってくるはずのお金が入ってこない場面が重なると、その穴を埋めるために、また借りる。銀行が渋りはじめると、今度はカードローンやキャッシングに手が伸びる。気づいたら消費者金融まで。雪だるまです。
最終的に12社、約4000万円。毎月の返済だけで100万円を超えていました。
だから今回のニュースで、僕が本当に心配しているのは、560社の中にいるであろう「うちみたいな小さな下請け」なんです。
大きな会社なら、取引先がひとつ飛んでも耐えられるかもしれません。でも僕みたいに、現場ひとつぶんの入金を頼りに回している小さな事業者は、たった一件の焦げつきで足元が崩れます。
「うちは真面目にやってきたのに、なんでこっちが」
そう思っている人が、今まさにいるはずなんです。8年前の僕が、そうだったように。
ここで、ひとつだけ伝えたいことがあります。
もし今、取引先の倒産に巻き込まれて、返せない借金を抱えてしまった人がいたとしても——それはあなたが悪いわけじゃない、ということです。
あなたはサボったわけでも、遊んで使い込んだわけでもない。ちゃんと仕事をして、材料を入れて、人に払って、それでも構造のしわ寄せを食らっただけです。真面目にやっていた人ほど、こういう飛び火をまともに受けてしまう。僕はそれを、心の底から理不尽だと思っています。
そして、借金が返せなくなっても、人生が終わるわけではありません。
僕は4000万円を滞納したまま、8年間、破産もせずに、いまも普通に生きています。今年から時効の援用を始めました。時効というのは最短でも5年かかるし、放っておいて勝手に消えるものでもなくて、こちらから援用して初めて効くものなんですが——ともかく、あの崖っぷちから、ちゃんと生き延びることはできました。
だから、もし今あなたが同じ場所に立たされていたとしても、どうか焦って命を削るような判断だけはしないでください。
お金は、また稼げます。倒れた会社の分まで、あなたが背負い込む必要はないんです。
まずは、深呼吸をひとつ。
今日のところは、それで十分だと僕は思います。
コタロー
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